半音階カリンバ
サンプル音
半音の出るカリンバを作成しました。音域は3オクターブと3度で、41キーあります。ピアノと同じ様な配置にしてあるので、ある程度鍵盤楽器に慣れ親しんでいる人なら、カリンバの音色で、自分の好きな旋律を奏でる事が出来ます。新しい世界が開けたような気持ちで、完成出来て本当に良かったです。
キーの一本一本を特製の金具でそれぞれに本体に固定するので、音同士が混ざりにくいのと、自由なキーのレイアウトが設計可能なのが特徴です。今回はキー先端が黒鍵/白鍵で一列に並ぶように配置しました。
4枚の振動体はその下にある響板にボルトで固定されています。振動体と共鳴体の役割を分離してあるのは、ムビラの考え方に近いですね。組み合わせで音色は変わると思います。面白い事に、大きなテーブルに置いたり、廊下に置いたり、カーペット、膝の上、などなど、置く場所によって音色が変わりました。振動体と共鳴体を別々に開発して行くのも良いかなって思っています。
今までのカリンバと一番違う所は、演奏する時に親指ではなく、それ以外の指を使って弾くという所です。そのため演奏する時は手のひらが下向きになるので、親指で弾くというスタイルは個の楽器に関しては難しくなりました。特に不便は感じないですが、カリンバと呼べるかは疑問です。とはいえここにとどまらず、今まで通り自由にさまざまなカリンバの形を模索して行きたいと思っています。
ボードタイプカリンバ
サンプル音
カリンバには大まかに言うと本体が共鳴箱になっているものと、板状になっているものがあります。カリンバの音は小さいですが、手にもって伝わって来る振動もとても大きな楽しみとなります。今回は振動の楽しみが味わえる様な楽器にしようと思い板状のカリンバを作ってみました。
僕の中ではタモはとてもいい響きがするような印象を持っていたので、今回はベースにタモ板を使いました。そして駒付近が一番厚くなる様に本体に独特の勾配を持たせた事で、シンプルながらもキーの響きをしっかりと本体に伝える構造となりました。クルミオイルで仕上げた本体は優しい手触りで響きに集中出来ると思います。また響きを長く豊かにするには、本体とキーとの固定をしっかりするのが大事です。六角レンチで裏からテンションを最適に調整出来る金具を自作し取り付けています。
真ん中のキーと左右5番目のキーは色を付けているのではなく、仕上げヤスリの目の方向を他と変える事で光の加減で目立つ様にしてあります。音に影響を与えずキーを判別する事ができるようになりました。音程はg3~g5のダイアトニック。どのキーも+-半音くらいまではチューニングを変更できます。
今回はこのようなタイプを掲載のもの含めて5台手がけました。ベースの部分はタモで、トップの薄板をさまざまな木で作っています。それらも順次発表して行きたいと思います。
カリンバの良い音ってどんなのかなぁという問いがあり、作り始めてから今に至ってもまだ謎です。きっと、人それぞれだとも思うのだけど、今回の楽器を作っていてなんとなく自分はこういう音が好きだなとか、こういう音をもうちょっと追い求めようかなみたいなのが出て来ました。どんな人の好みにも合わせていろんな音が作れる程器用ではないので、少なくとも自分が好きだなって思える音と響きを発信していきたいです。
※この楽器は仙台壱弐参(いろは)横町の中のエスニック雑貨屋さん「すあら・ばぐーす」にて出品させて頂いておりました。
キストカを使ったろうけつ染め
皆さんはピサンキをご存知でしょうか?ピサンキとはウクライナに伝わる卵殻の染色法で、イースターエッグを装飾する技法として知られています。キストカと呼ばれる金属製のペンの様なものにロウを詰めて熱し、卵に模様を描きます。それから染料に付けると、ロウで描いた部分は染料をはじき、それ以外の部分が染まります。これはろうけつ染めの一種なのですが、このキストカ(左写真上)は細くロウの線を描く事が出来るので、これを使って本体の装飾をやってみたいと思いました。
かつてやっていたろうけつ染め(作品アルバム その1・2)と基本的な手法は同じなのですが、この道具を使う事で新しいメリットがありました。それはやはり線が細いので表現に幅が出たという事、それから、キストカは金属の小さな壷にロウを熱いまま溜めておく事が出来るので、木にロウをのせるまで保温がきき、筆でやるよりもいくらか確実なロウふせが出来るという事です。 (さすがに木なので印刷ようにくっきりとはなりません)
今回の作品では、しずくちゃんに染めをやって頂きました。もちろん僕も今後装飾も入れていきたいと思うのですが、自分に無い発想を楽器に取り入れてみたいと思い、今回はあえてお手伝いして頂きました。今回染めてもらった朴の木は色がうすい灰色〜緑色がかった、ちょっと変わった色の木だったため、白っぽいメープルや樺に染めるのとは発色がだいぶ違っていて、色選びにも吟味が必要だったようです。
楽器というのは音が出てる時に真価が問われるものなかもしれません。でも鳴らしていない時でも、そこにあるだけでも喜んでもらえるならそれはそれで素晴らしい事だなと思います。楽器が長くかわいがってもらえて、結果として末永く奏で続ける楽器になっていくのではないかという思いを込めてみました。