◇その6(2010-11年製作)

半音階カリンバその3(POLON)


試聴サンプル音1
試聴サンプル音2
クロマチックカリンバの楽しさを多くの人と分かち合いたいと思い、市販出来るモデルを製作しました。それにあたっては、出来るだけメンテナンスがしやすくて、出来るだけどの音も均一になるように心がけました。音域はF2からF6までの4オクターブです。
試聴音域
この音域は初めて作ったクロマチックカリンバの音域に、さらに最低音を5度下までカバーした事になります。左手で伴奏をしていると、どうしても低音が欲しくなって来たのでこのようになりました。
特に苦労したのはどの音も均一にならすと言う事でした。ウルフトーンというものをご存知でしょうか。箱形の楽器はどれも固有の共振周波数を持っています。つまり、箱にはなりやすい音となりにくい音のクセがあるとも言えます。箱が苦手とする音とならしたい音が一致してしまうと、その音はどんなに強く弾いてもたちまち消えてしまいます。これがウルフトーンです。これを完全になくす事は出来ませんが、出来るだけ目立たなくなるように振動体と箱の構造を工夫しました。とはいえ、もっと良い音色を目指してこれからも研究は続きます。
POLONとはクロマチックカリンバのモデル名、または愛称として名付けました。ポロンと読みます。可愛がってもらえる様な名前が良いなと思いました。

半音階カリンバその4(POLONスタンド付)



今回のポロンの大きな特長はは楽器にニス塗りを施した事、そしてスタンド付となった事です。
楽器用のニスには色々ありますが、シェラックをベースにしたものを使いました。シェラックは東南アジアに生息するカイガラムシの分泌物を精製したもので、古来から使われてきた天然成分のニスです。アルコールに溶かして使います。今回は当工房のしずくちゃんが情報収集・試行錯誤して、弦楽器用ニスを参考にしながら独自の調合をし、施工しました。
楽器ニスを施した後の楽器の表面は、オイル仕上げの時よりも硬質になり、結果として音の輪郭がはっきりした、こしのある音になりました。なにより、板の内側から木目の美しさが引き出されるのは感動的でした。
そして、工具無しで組み立てられるスタンドは高さの調節付。椅子に腰掛けて弾く事が出来ます。抱えた時と違い楽器のポジションを保つために体の動きが制限される事もなく、演奏に集中できます。また共鳴体の両端のみで楽器を支えているので、振動を妨げる要因は少なく、音が良く伸びる様になりました。
思いがけない新しい発見はまだまだあるかもしれません。そう感じる事が出来るのは、演奏実演会等で聴きに来て下さったお客さんやサポートして下さる方々のおかげだと思います。感謝しつつ、これからもポロンの開発を続けていきたいと思います。
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